東北大学 社会にインパクトある研究 持続可能で心豊かな社会の創造

C. 安全安心の実現

  • c4 放射線安全
  • 新堀 雄一(工学研究科)

放射線に関するリスク理解の深化と災害時対応および廃棄物に関する基盤研究

我が国では、福島第一原子力発電所の事故以降の経緯を大きな転機として、放射線や放射性物質のリスクは、一部の専門家の学問基盤の問題としてではなく、暮らしの知恵として共有すべき課題であることが、また同時に原子力災害時や放射線の医学利用における放射線防護、および、放射性廃棄物※1のリスク管理に係る課題が強く意識されることとなった。しかし、これらの課題解決は、国内外において切望されるも、いまなお困難な状況が続いている。

東北大学では、すでにサイクロトロン・ラジオアイソトープセンター、工学研究科、理学研究科、医学系研究科などの部局において放射線や放射性物質に関する講習会・講義・演習が実施されてきた。また、これまで多くの教員が放射線や放射性物質に関連する研究を進めており、それらは原子力発電に関連する工学のほか、医学や理学などのきわめて多岐の分野にわたる。たとえば、原子炉材料の研究、放射線量の監視と環境汚染の調査、環境における放射性物質の移行挙動の解明、放射性物質をより安定な元素に変換する技術※2の開発、福島第一原子力発電所の廃止措置に関連する基盤研究※3、地殻科学に基づく廃棄物の閉じ込め技術の開発、さらに人体に対する放射線影響評価や放射線の被曝防護に関する医学的研究、放射線の高度利用とその医療への応用※4、素粒子・原子核物理に関する実験的研究などがそれにあたる。しかし、これらの研究を行っている教員の間での放射線に関する情報交換や考え方の共有はあまり進んでいないのが現状である。また、国内外においても、放射線や放射性物質に関連する教育や研究知見を社会にいかにして広めていくかについて、十分な検討がなされてきたとは言い難い。さらに、放射線や放射性物質のリスク管理と利用に関連する多くの研究の中で、原子力災害時や放射線の医学利用における放射線防護に係る基盤整備の促進、および放射性廃棄物の適切な取り扱いの問題は、東日本大震災の被災地の中心にある総合大学に、特に求められる課題となっている。

本プロジェクトでは、放射線リスクの理解、災害時対応および廃棄物の課題解決についての社会からの強い要請に正面から応え、それらの解決を推進するため、工学研究科量子エネルギー工学専攻が中心となり、理学研究科物理学専攻・化学専攻やサイクロトロン・ラジオアイソトープセンター、医学系研究科、歯学研究科等とともに、次の取り組みを行う。

  • (1)教育や研究を通じて個々の教員が持つ放射線や放射性物質の捉え方を共有し深めることにより、放射線や放射性物質の何を恐れ、何を恐れる必要がないかなど、「放射線についての暮らしに活きる知識」を社会に提示する。
  • (2)人体に対する放射線の影響評価や放射線の被曝防護に関する医学的研究を通じ、原子力災害時や放射線の医学利用における放射線防護に係る基盤整備の更なる促進を図る。
  • (3)廃棄物の安全化に向けた考え方および関連する研究ロードマップを社会に提示し、放射性廃棄物からの放射線防護や放射性廃棄物の低減化に係る基盤研究を加速させる。また、福島第一原子力発電所の事故に伴う廃棄物を含め、高レベルおよび低レベル放射性廃棄物の処理・処分の一層のリスク管理に向け、短期間と長期間で行うべき内容に分け、各々の研究を強力に推進する。

本プロジェクトによって、放射線や放射性物質の理解とそのリスク管理を、倫理的・社会的観点をも加えた多分野の知見から再検討し、放射線安全社会の未来像を構築する。

※1 放射性廃棄物は現状では高レベル放射性廃棄物と低レベル放射性廃棄物に大別される。高レベル放射性廃棄物は、再処理工場から排出されるウランおよびプルトニウム回収後の高レベル廃液をガラス固化したガラス固化体を指す。他方、低レベル放射性廃棄物は、原子力発電所の運転に伴う廃棄物に加え、廃炉に伴う炉内構造物、燃料被覆管、さらには、大学を含む研究所などから排出される多様な廃棄物(研究所等RI廃棄物)などを含む。福島第一原子力発電所の事故に伴う廃棄物は、事故廃棄物と呼称され、今後、放射能レベルによって放射性廃棄物としての区分やそれらの管理・処分形態が検討される。 ※2 放射性物質の一部を化学的に分離し、加速器等により発生させた中性子により、放射性物質の危険性を軽減する技術(加速器駆動炉による核変換技術など)。 ※3 東北大学は原子炉廃止措置基盤研究センターを2016年12月に発足させた。同センターの研究には、廃止措置の期間における建屋の健全性維持に加え、廃棄物の処理・処分についての基盤研究を含む。
※4 加速器を用いた元素分布の高精度マッピングなどの放射線の高度利用とその医療への応用。そこでは癌の放射線治療に関する基盤研究、乳歯への放射性物質のマッピングと被曝線量評価に関する研究を含む。

プロジェクトの概要

推進責任者 |  新堀 雄一(工学研究科教授)
田村 裕和(理学研究科教授)
細井 義夫(医学系研究科教授)

活動実績・成果の概要

このプロジェクトに関するお問い合わせ

現在準備中

  • A | 持続可能環境の実現
  • B | 健康長寿社会の実現
  • C | 安全安心の実現
  • D | 世界から敬愛される国づくり
  • E | しなやかで心豊かな未来創造
  • F | 生命と宇宙が拓く交感する未来へ
  • G | 社会の枢要に資する大学