東北大学 社会にインパクトある研究 持続可能で心豊かな社会の創造

B. 健康長寿社会の実現

  • b3 認知症ゼロ
  • 瀧 靖之(加齢医学研究所)

スマート・エイジング:生涯健康で認知症ゼロの社会(※1)を目指して

日本は先進国の中でも最も高齢化が進行している社会であるが、認知症及びその予備群を含めると800万人以上になるという大きな問題を抱えている。またその経済的損失も年間16兆円以上と試算されており、認知症予防は急務である。

東北大学には、大規模脳加齢コホート研究、タウ蛋白イメージングを用いた認知症超早期診断、運動・認知介入※2による認知力向上研究等、世界最先端の多くの研究実績と強みがある。これらの実績を、最新のセンサシステム※3により自ら収集した生活情報と有機的に組み合わせ、認知症を超早期に予防しリスクを低減するため、エビデンスレベルの高いシステムにより、「個人に最適化されたプログラム」を提示し、その成果を社会に還元する。

さらに、このシステムを国内外に発信し、世界を主導するより包括的な普及を図って「認知症ゼロ社会」を目指す。

※1 認知症は、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、脳血管性認知症など複数の疾患を含み、またそれぞれの疾患は遺伝要因と生活習慣要因の両者の相互作用で発症すると考えられている。そのため、認知症ゼロを完全に達成するのは、現状では困難である。しかしながら、生活習慣要因に着目することで、認知症のリスクを下げることは可能で、本プロジェクトは理念としてどこまでも「認知症ゼロの社会」を目指して行く。 ※2 介入とは、人の健康に影響を与える要因に関して、その有無や程度を制御する行為と定義されている。「運動介入」とは運動による介入を指し、「認知介入」とは高次認知機能の維持に効果があると考えられる医療行為による介入を指す。 ※3 ここでの「センサシステム」は、睡眠、運動、コミュニケーション量等の生活習慣情報を収集するセンサシステムを指し、「最新のセンサシステム」とは、これらの生活習慣情報を出来るだけ自身が意識せずにさりげなく収集出来るようなシステムのことである。

プロジェクトの概要

  • 社会的課題

    高齢社会である日本では、認知症患者は予備軍も含めると800万人以上いると言われており、その経済的損失は世界で年間約50兆円、日本で14.5兆円と試算されている。このため認知症予防は急務の課題である。近年の研究の発展により認知症は早期診断が可能になり、生活習慣の改善等により予防できる可能性が示されるようになった。一方で、予防には食事や運動など個人の日常生活を踏まえた包括的な対策が必要とされており、検査や薬物投与だけでは予防を実現することができない。

  • 解決の方法

    本プロジェクトでは「認知症ゼロ社会」の構築を目指す。そのために、自宅での生活情報の収集(センシング)とそのデータの解析・診断、解析結果を踏まえた介入を包括的に実施することでエビデンスレベルの高い認知症予防システムを確立する。また、新たな社会・経済制度や死生観の提案を行い、これらを合わせて社会に還元していく。

  • 東北大学の強み

    東北大学は、大規模コホート研究やタウ蛋白イメージングを用いた認知症早期診断、運動介入や認知介入による認知力向上研究など、認知症に関わる豊富な研究蓄積・人材がいる。これらの実績を組み合わせ、発展させていくことでプロジェクトを遂行することが可能である。

  • プロジェクトの効果

    本プロジェクトを通じて、認知症予防を実現し、健康寿命の延伸と幸福度の向上を実現ることができる。また、健常高齢者1000人に介入することで、年間1億8千万円以上の医療費削減が可能になると試算されている。さらには、センシングのための機器・技術や機能性食品生産など、健康増進ビジネスを活性化することができる。

  • 組織体制

    東北大学スマート・エイジング学際重点研究センターが中心となり、加齢医学研究所、災害国際科学研究所等の学内部局と連携し、企業や自治体、省庁、生活者等の社会と関わりながら本プロジェクトを推進していく。

推進責任者 | 瀧 靖之 教授(加齢医学研究所)

活動実績・成果の概要

このプロジェクトに関するお問い合わせ

東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター
TEL:022-717-8582
sac-office※grp.tohoku.ac.jp
(※を@に変えてください)

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