東北大学 社会にインパクトある研究 持続可能で心豊かな社会の創造

A. 持続可能環境の実現

  • a1 地球温暖化
  • 早坂 忠裕(理学研究科)

地球温暖化の緩和と適応への貢献

我々の住む地球を、最深部から周辺の宇宙空間にいたるまで、地球活動のメカニズムを含め、全てを理解することは、地球に住む人類の知への挑戦であり、数々の謎の解明は人類の知ることの価値として蓄えられる。地球に起こる様々な現象を、固体地球、海洋、大気、超高層大気、電磁圏、そして惑星圏をフィールドとし、物理学を基礎として研究する学問が地球物理学である。地球は今もなお生きて活動し、そこでの自然変動は、時として人間活動にも大きな影響を与える。他方、人間の活動が地球レベルの環境に影響を与えることもある。その顕著な例の一つとして考えられているものに、近年、活発に叫ばれている地球温暖化がある。

東北大学は、これまでの地球物理学研究を推進してきた知への探究心を結集し、地球温暖化の理解に挑む。気候変化によって世界が大きな影響を受けることは良く知られているが、近年の地球温暖化に拠ると考えられる気候変化には予想外の現象も多く見られるようになった。地球温暖化の緩和策を講じるとともに、これら未経験の変化をも考慮した適応策を探ることは今日の喫緊の課題である。さらに、自然災害に対応する防災の在り方を新たな視点で探究するとともに、農業や漁業等の産業や社会の維持発展に役立つような気候情報※1の積極的な活用を図ることは持続可能な社会の構築のための重要な課題である。

このような社会の要請に応えるため、東北大学は、温室効果ガス・エアロゾル・海洋計測、およびダウンスケーリング手法等に関する地球物理学研究の強みを活かし、未曾有の気候変化をも捉え得る新たな計測技術・分析手法を開発し、世界的規模の高品位なデータ※2として蓄積する。そして、それらのデータに基づいた気候変化の検証と将来予測を行い、また、新たに生じる社会ニーズに即した時間的・空間的に確度の高い予測情報を提供・活用することにより、地球温暖化の緩和策と適応策の構築に貢献する。

そのためには、社会の実働的立場にある多様なステークホルダー※3に向けた、これまでにない双方向型インターフェース※4の構築とその継続的発展が不可欠である。東北大学気候研究推進センター(仮称)は、地球に起こる様々な物理現象の解明を目指すデータの解析・蓄積を行うと同時に、双方向型インターフェースを運用し、気候変動に対する世界規模の緩和策に資するデータの活用と、ローカルな気候変化に伴う社会リスクの低減と回避に向けた適応策に有用な情報の提供・活用を実現する。さらには、地球物理学研究者と社会のステークホルダー双方にとって共有可能な「知る価値」を創造する。

※1 これまでの基礎情報(気温、降水量、集中豪雨、積雪量、猛暑と冷夏、暖冬、海面平均水温、日照時間)に加え、海流・渦・潮目の位置・強さ ※2 二酸化炭素、メタン等各種温室効果気体の濃度、炭素同位体比、衛星・地上観測による雲、エアロゾルの物理量、アルゴフロート等を用いた海洋観測データ、その他 ※3 国際機関、国、地方自治体、市民、各種産業界、各種団体 ※4 地球温暖化啓発、気候情報提供、農業・漁業・防災に関する適応策提言、経済・外交・安全保障に関わる情報提供インターフェース、および緩和策の検証に資する温室効果気体濃度、人為起源エアロゾルの種類、濃度に関わる情報提供インターフェース

プロジェクトの概要

  • 社会的課題

    近年の地球温暖化に拠ると考えられる気候変化は、自然環境と人間生活の双方に影響をもたらしている。気候変化のリスクを低減する緩和策と適応策を講じるためには、研究機関や専門家が社会のニーズを認識し、役立つデータ・情報を生産・蓄積すると同時に、そのような情報を社会に積極的に提供し、具体的な対策につなげていく必要がある。しかし、研究と社会を結ぶ有効なインターフェースが不足しているのが現状である。

  • 解決の方法

    本プロジェクトでは、気候変化を検証し、社会ニーズに即した確度の高い予測情報を提供・活用することにより、地球温暖化の緩和策と適応策の構築に貢献することを目指す。そのため、社会の実働的立場にある多様なステークホルダーに向けた双方向型インターフェースを構築し、継続的に発展させていく。そうして社会と研究者双方にとっての「知る価値」を向上する。

  • 東北大学の強み

    東北大学理学研究科は二酸化炭素の高精度観測や気象データの再解析、雲の観測などの分野において世界をリードする研究を行ってきた。また、東北大学は農学や生命科学、災害科学など、気候変化と関わる分野を有する総合大学であり、課題解決に向けた学際的研究を行うのに十分な陣容を有している。

  • プロジェクトの効果

    緩和と適応に貢献することにより、気候変化の自然・社会へのリスクを低減することができる。また、自然・社会へのリスクを低減するローカルな手法を世界各地に展開すること、さらにはグローバルな情報を世界に発信することを通じて、地球規模で緩和と適応に貢献し、持続可能社会を実現する。

  • 組織体制

    東北大学気候研究推進センターが中心となり、環境研究推進センターと協力してプロジェクトを推進する。気候研究推進センターでは理学研究科や農学・工学・情報科学研究科、災害科学国際研究所等の研究者が学外の研究所等と連携して研究や情報提供を行う。また、国際機関や自治体、市民、産業界などに情報を提供し、緩和と適応に向けた活用を進める。

推進責任者 | 早坂 忠裕 教授(理学研究科)

活動実績・成果の概要

このプロジェクトに関するお問い合わせ

現在準備中

  • A | 持続可能環境の実現
  • B | 健康長寿社会の実現
  • C | 安全安心の実現
  • D | 世界から敬愛される国づくり
  • E | しなやかで心豊かな未来創造
  • F | 生命と宇宙が拓く交感する未来へ
  • G | 社会の枢要に資する大学