D. 世界から敬愛される国づくり
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堀田 龍也(情報科学研究科)
心豊かにする未来の情報科学
コンピュータの性能の向上、ネットワークの整備、通信の高速化、人工知能やIoT技術の発達など、情報化の急速な進展によって、私たちの生活環境のみならず、行動や習慣、価値観、教育や産業の在り方が大きく変容してきた。それによって、情報リテラシー不足が招く情報格差や、情報モラルや情報セキュリティなどの諸課題が噴出し、「人間性と情報技術との調和」が今日の大きな社会問題となっている。そのため、従来のコミュニケーション論・組織論・社会論・教育論だけでは、もはや対応が難しくなっている。
未来の情報社会を想定し、文化・社会・生活・産業の変化の姿を浮き彫りにした上で、「五感で感じ得る心豊かな情報社会」の実現のために何をなすべきか、また情報社会の「光」と「影」を熟知し「人間を心豊かにする」情報科学のあり方を理解した人の育成に関わる教育の在り方などの根源について、一度立ち止まって検討することが必要である。
東北大学は、情報科学研究科 人間社会情報科学専攻※1が中心となり、従来の個別科学を統合する共通概念としての「情報」に着目し、情報化による社会の変革を探り、人間と情報の関係を捉えるための学際的な教育研究を推進する。情報社会によってもたらされる恩恵や希望等の「明」と、それらの恩恵を享受する中で懸念される「暗」の課題を踏まえ、未来の社会のビジョンを描き、大学教育で実践するとともに、人材育成や社会の在り方に対する提言を行い、初等中等教育や社会への実装を目指す。
具体的には、
- (1)多様な価値観が際立つ情報社会における批判的思考力の養成
- (2)情報技術の習得だけでなく「人間性と情報技術との調和」を問い直す情報リテラシー教育および言語教育の在り方
- (3)情報社会における社会参画や労働の在り方と弱者への寄り添い方
- (4)芸術など文化面において科学技術がもたらす変容
に関して、価値観・倫理観の包括的な検討を行う。
本研究で得られた知見を社会に発信することによって、上記の社会課題を解決し、心豊かな未来の情報社会を実現するとともに、情報社会の光と影に対応できる知識と人間力を有したリーダー層の人材育成を図り、教育界や産業界、地域社会に広く輩出する。
プロジェクトの概要
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社会的課題
情報化の急速な進展によって、人間性と情報技術との調和が大きな社会問題となっている。大量の断片的な情報に晒されることで自分で冷静に情報を選択・判断することができなくなり、自分を見失う危険性がある。また、人間性の低下や情報リテラシー不足などによる社会参画の格差、人間関係の希薄化といった問題も生じている。このような事態に対応するためには、情報社会の技術・制度・文化を一度立ち止まって問い直す必要がある。
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解決の方法
本プロジェクトでは、人文系の視点で人間と情報の関係を捉えなおし、人間を心豊かにする情報社会を構築することを目指す。具体的には、(1)情報社会における文化の探究、(2)情報社会のデザイン、(3)情報教育のデザイン、(4)高度人材の育成、の4つのテーマで研究・実践・教育を実施し、未来のあるべき情報社会を描き出して実装につなげる。
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東北大学の強み
東北大学情報科学研究科は国立大学の情報系研究科のなかでも最も多様な人文系教員が所属し、さらに平成20年度以来、大学院教育にて情報リテラシー教育プログラムを実施して、社会とも積極的に関与してきた。このように、人文系の強みを活かし、社会と関わりながら研究・教育する体制が整っている。
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プロジェクトの効果
情報リテラシー教育の確立と普及、格差のない社会参画の実現、情報社会を担う高度人材の輩出を実現し、これらを通じて人間性と調和する心豊かな情報社会を構築する。
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組織体制
情報科学研究科情報リテラシー研究センターが中心となって情報リテラシー教育プログラムや言語変化・変異研究ユニットとともにプロジェクトを推進し、教育情報基盤センター等の学内部局や行政、学校・教育産業、メディア、市民と関わりながら研究・実践する。
推進責任者 | 堀田 龍也 教授(情報科学研究科)
プロジェクトの資料
関連サイト
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東北大学大学院情報科学研究科 情報リテラシー教育プログラム
https://www.is.tohoku.ac.jp/LItNEX/seminar.html
このプロジェクトに関するお問い合わせ
情報科学研究科メディア情報学講座 教授 堀田 龍也
TEL:022(795)4387
horita※media.is.tohoku.ac.jp
(※を@に変えてください)