B. 健康長寿社会の実現
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永富 良一(医工学研究科)
自律的に心身恒常性維持を図る調和型健康社会の実現(※1)
健康なままで一生を全うすることは、人の最大の願いの一つである。そのためには体内部や環境因子の変化に対し、生理的状態や心の平衡状態(バランス)が一定状態に保たれているかどうか(恒常性)を自身で把握し、維持することが重要となるが、現状では恒常性維持のために何を計測解析すれば良いかも確立しておらず、一方で疾病の不安を煽る情報が溢れている。
そうしたなか個々人が恒常性を維持するのに必要となるのは、自身の心身の健康状態の平衡状態(バランス)を的確に把握し、それが崩れたときには、疾患に至る前の未病状態のうちに適切に対応する恒常性維持のための(1)システム形成と(2)知識の涵養である。すなわち、(1)心身状態や、食事を含めた行動情報および環境情報を取得できる各種センサーの開発と、取得された情報およびゲノム情報等の個人特性情報を総合解析し、個々人にフィードバックするシステムの構築が必須である。加えて、(2)個々人が、フィードバックされた情報を健康の「法則性(nomos)」に関する「知識」として的確に理解し、その理解を「自分自身(autos)」の「恒常性維持」に役立てるため、平衡状態(バランス)からの逸脱を自らの意思で防ぐべく行動を主体的に変容させるという、個々人の「自律性(autonomy)」の確立を促し涵養する環境整備が不可欠である。これらにより個人がその時々のライフステージに沿った健康維持を自律的に図り、自然環境や社会と調和しながら生涯心身ともに健康で生き生きと暮らすことができる。
本プロジェクトは、東北大学の知を結集し、個人を中心とした健康の維持ならびに未病状態を速やかに健康に戻すというヘルスケアの考えの下、(1)および(2)の課題の具体的な解決策を確立し、その方法の構築を図るものである。東北大学には、各種センサーの開発、情報通信技術や健康に関わるコホート研究に多くの実績があり、遺伝子情報の個別化医療、個別化予防への活用を目指す先進的な取組みも進めており、これらの研究と密接に連携をとり本プロジェクトを推進する。
本プロジェクトによって、心豊かな健康長寿社会の実現のみならず医療費の削減にも大きく貢献できる。また、収集データを個人が特定できない情報として利活用することにより、新たな製造業、サービス業等の創出を促進できる。
プロジェクトの概要
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社会的課題
健康なままで一生を全うすることは人の最大の願いの一つであり、そのために病気に至らないようにするヘルスケアが求められている。しかし、自らの健康状態を把握する知識や手段がなく、信頼性に乏しく不確定な情報が氾濫していること、さらには科学的に健康や未病が解明されていないため、自分にあった健康管理法がわかりにくいのが現状である。
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解決の方法
本プロジェクトでは心身のバランスを一定に保つこと(=恒常性維持)の重要性に着目し、個々人が自身の心身の健康状態のバランスを的確に把握し、崩れた時には未病のうちに適切に対応することで自律的に恒常性を維持できる社会の構築を目指す。そのために、心身の状態などの情報を収集・解析し、個人にフィードバックする(1)システム形成と、フィー ドバックされた情報を理解し健康維持に向けた行動に結び付ける(2)知識涵養を実施する。そうして、人々が自然や社会と協調・交流する調和型健康社会の実現に貢献する。
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東北大学の強み
東北大学にはセンターオブイノベーション事業(COI)東北拠点を中心にした健康管理の研究開発に関する企業や自治体との連携実績がある。また、医工学や工学、情報科学 等において各種センサーの開発、情報通信技術や遺伝子情報の個別化医療への活用等を目指す取り組みも進めており、豊富な研究実績と全学をあげた研究体制がある。
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プロジェクトの効果
本プロジェクトの成果によって、心豊かな健康長寿社会の実現のみならず医療費の削減にも大きく貢献できる。また、個人が特定できない情報として収集データを利活用することにより、新たな製造業、サービス業等の誕生を促進することができる。
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組織体制
本プロジェクトは医工学研究科が世話部局となる心身恒常性研究センターを中心に、医学系研究科や工学研究科、COIなど学内の様々な部局が連携し、国や自治体、他大学、研究所、海外研究機関、企業などと協力してプロジェクトを推進する。
推進責任者 | | 末永 智一 教授(原子分子材料科学高等研究機構) |
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永富 良一 教授(医工学研究科) |
プロジェクトの資料
関連サイト
このプロジェクトに関するお問い合わせ
イノベーション戦略推進本部 事務支援室
promo-innov※grp.tohoku.ac.jp
医工学研究科
TEL:022-717-7338
shinichi.izumi.c2※tohoku.ac.jp
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