A. 持続可能環境の実現
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吉岡 敏明(環境科学研究科)
新しい価値観に根差した持続可能な社会の実現
近年、地球温暖化や自然環境の劣化が進み、その一方で化石燃料や資源の枯渇蓋然性の高まり及び世界的偏在がエネルギー安定供給や資源確保に深刻なリスクをもたらしている。これらの問題の解決のため国や国際レベルでの研究や対応策の検討が行われてきたが、未だ具体的な解が得られない状況にある。その主因は、諸課題に関するステークホルダー間の認識の齟齬や価値観の衝突、解決プロセスを巡る連携不足、自然科学および人文・社会科学を包摂した科学研究成果の社会への還元の不十分さにあると考えられる。例えば地球温暖化問題は、時間的空間的スケールが大きい問題であるが、思考が近視眼的になりがちで緊迫性が希薄になる一方、経済的・社会的な利害関係が顕在化している。そのため持続可能な地球環境と心豊かな人間社会という理想を統一的に結像させるには、暮らし方や社会の在り方に関する価値観の大変革が必要となる。
東北大学は、「環境研究推進センター」が中枢となり、幅広い基礎と応用研究の強みに加え、東北地方で醸成されてきた固有な文化をも強力かつ有効な指標として捉え直し、地球環境と共生できる心豊かな人間生活の基盤となる「新しい環境価値観」創造を中心的な目標として持続可能社会への確かな道筋を示す。具体には、持続可能社会の構成要素として不可欠な低炭素社会・自然共生社会・循環型社会の形成を目指す複数のプロジェクト※1を統括し、各プロジェクトで得られる種々の環境価値概念を有機的に連関させた「環境価値学」を一個の学術として創生する。さらに産業群の創造、地産地活に基づく地域新生を目指した「東北大学モデル」を構築・展開し、持続可能性の制約のもとで心が豊かになる多様な価値観を創出する。こうして生まれた「環境価値観」に沿って、科学研究成果の社会への還元の在り方を改めて問い直し、ステークホルダー間の共通認識形成と解決プロセスにおける具体的な協働の実現を目指す。また、研究成果を社会実装する過程で浮かび上がって来る諸問題を現実的側面と科学に求められる社会的使命の両面から捉え直し、新たな価値観の基として環境研究と人材育成・交流を含めた社会実践を具現化する。さらにこれらの成果を国への政策提言、国際的アライアンス構築・連携・提案へ展開し、科学研究と社会の共進化を先導する。
プロジェクトの概要
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社会的課題
これまで持続可能な社会の構築を目指し、国内外で様々な取り組みが行われてきた。しかし、ステークホルダーの間で理想像や価値観・認識の不一致がみられるうえ、問題解決への明確なプロセスが確立されておらず、研究成果が社会で十分に生かされていないという課題も存在している。
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解決の方法
本プロジェクトでは低炭素社会、自然共生社会、循環型社会を目指す4つのプロジェクトの統括を通じ、環境価値を探求する新たな学問「環境価値学」を創生する。これにより、地球環境と共生する人間生活の基盤となる新たな環境価値観を創造する。また、創造した環境価値観に基づいて社会の在り方を変革する問題解決プロセス、「東北大学モデル」を構築し、国内外で展開する。これにより、持続可能で心豊かな社会の構築を目指す。
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東北大学の強み
東北大学は、社会にインパクトある研究のAグループ(持続可能環境の実現)において持続可能社会を目指す研究・実践体制を構築しているほか、学内に持続可能社会に関わる人文・社会系および理工系の幅広い研究蓄積があり、多面的な研究が可能な研究体制が整っている。
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プロジェクトの効果
大学が中心となって社会、産業、国際機関が協働することを通じて、学術創生(環境価値学の創生)、地域新生(地域と大学が協働し、価値観や社会システムを変革)、産業創造(持続可能社会に関わる新たな産業の創造)を実現し、科学研究と社会の共進化を実現する。
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組織体制
環境研究推進センター(仮)が複数の持続可能社会実現プロジェクトを統括し、全学をあげた研究連携を進める。さらに学外の多様なステークホルダーとの学外連携・協働体制を構築し、実効性のある研究成果の社会実装を図る。
推進責任者 | 吉岡 敏明 教授(環境科学研究科)
プロジェクトの資料
関連サイト
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東北大学・プラスチックスマート戦略のための超域学際研究拠点(TU-TRIPS)
http://tu-trips.com/tutrips/ -
せんだい環境学習館 たまきさんサロン
https://www.tamaki3.jp/salon/
このプロジェクトに関するお問い合わせ
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