東北大学 社会にインパクトある研究 持続可能で心豊かな社会の創造

D. 世界から敬愛される国づくり

  • d3 情報価値学
  • 坂井 信之(文学研究科)

超巨大情報量時代に向けた情報の質と価値の科学技術~情報質インフォマティクスの創造~

再現性と普遍性を追究して厳格な法則性を見いだそうとする自然科学と、固有性と特異性を尊重しながら事象の総体が生み出すリアリティについて考究して価値付けようとしてきた人文系の諸学問は、並走しながら人類の知を継承・発展させてきた。一方で、テクノロジーは自然科学の資産に依拠しながらも、その作法にとらわれることなく人間活動や社会の効率化に貢献してきた。

ビッグデータ解析によるイノベーションや課題解決が優先される時代は、いわゆるAIに代表されるような、系統的な知識を前提としないテクノロジーが先導している。これは伝統的なアカデミズムが明快な解を持たない領域を対象としたことでテクノロジーの遍在化を促進することになったが、同時に、課題解決が生み出す知識が非構造的であり系統的な知識構造として共有・継承されることは困難となった。さらに、人類がさらされる情報量は急激な拡大を続けており、これによって、既存技術のテクノロジーの延長では情報の記録・演算・通信などの通常の処理さえも困難になり、また重要な情報、信頼できる情報の選択も著しく非効率となる事態が生じている。

本研究では、この事態に対処するために、拡大し続ける情報の「質」および「価値」を、再帰的に更新される知識構造を参照して判断し、優先付けして、課題解決を実現する新しい情報学を開拓する。具体的には、人文社会科学・情報科学・理工学の知を連携させることで、AI・テクノロジーによってもたらされる知識を構造化して知識構造を更新するとともに、それに基づき、情報の「質」および「価値」の判断を行う新しい情報学を目指す。

これらは、来るべき超巨大情報時代において、誰もが、必要とする情報をその価値と共に自在に享受できる社会を実現するために解決すべき最重要課題である。その解決の道筋を示すことは、わが国の優れた情報通信技術の新たな地平を開くことにつながり、この分野での日本のプレゼンスのさらなる向上がもたらされることになるであろう。また、伝統的なアカデミズムとAI・テクノロジーが協働してイノベーションを実現する枠組みの未来形を与える。

プロジェクトの概要

  • 社会的課題

    人類が作り出す情報量は日々増加している。その処理には、AI に代表されるような、系統的な知識を前提としないテクノロジーが頻繁に利用され、生み出される知識が共有・継承されることは困難となっている。また、過剰な情報によって情報の記録や演算、通信が困難になり、さらに意思決定や理解が阻まれて知的生産性を損なう情報のオーバーロードに直面している。このため、大量情報の中においてもより豊かな知性を生み出す情報環境の構築が求められている。

  • 解決の方法

    本プロジェクトでは情報の量ではなく「質」に注目する。人文社会科学・情報科学・理工学が連携して情報の価値づけと優先選択を行う「情報質インフォマティクス」を構築することで、オーバーロードを解決することを目指す。具体的には、情報の価値を判断して優先付け(トリアージ)する技術を開発し、価値の高い情報へのアクセシビリティ向上を実現する。また、価値基準となる知識体系である、「知識構造」の構築手法を開発する。情報の価値基準は主体や対象に合わせて多元化し、公共性を重視した価値基準を提案する。

  • 東北大学の強み

    東北大学では情報科学・哲学、論理学の分野や人間社会科学の分野において、脳科学と連携した人間の認知・行動モデリングなど学際的な研究を展開している。情報通信分野においても光・無線通信や半導体デバイス等、先進的な研究を展開してきた。また、すでに文理連携の国際研究開発拠点を構築し、情報の量と質を扱うための「情報質インフォマティクス」構築に取り組んでいる。

  • プロジェクトの効果

    情報処理の無駄を最小化して情報通信基盤を強化し、情報処理コスト削減と円滑な情報利活用によって知的生産性の高い社会を実現する。また、トリアージの過程で多様な価値観を創出し、人々の質の高い生活の実現に貢献する。これらを通じて情報オーバーロードを乗り越え、大量情報を活用できる超スマート社会を構築する。

  • 組織体制

    東北大学が認定する学際研究重点拠点であるヨッタインフォマティクス研究センターが中心となり、三つの部門を通じて研究開発を展開する。このセンターは学内8部局の分野を超えた研究者、国内外の研究者と協力し、効率的な知識の集約を進める。

推進責任者 | 坂井 信之 教授(文学研究科)

活動実績・成果の概要

このプロジェクトに関するお問い合わせ

ヨッタインフォマティクス研究センター
aiic※riec.tohoku.ac.jp
(※を@に変えてください)

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