「社会にインパクトある研究」は、人類が持続的な世界を構築するために必要となる課題を整理し、東北大学の研究の伝統と強みを活かして構成した分野融合・学際研究プロジェクト群です。持続可能性を資源や環境の側面からだけでなく、経済や社会の側面からも総合的に捕らえた課題が設定されていることから、国連の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(2015年9月採択)が掲げる「持続可能な開発のための目標(SDGs)」の17の目標と169のターゲットと共通する内容も多く、したがってSDGsの達成にも貢献することができます。
東北大学における「持続可能な社会の実現」に向けた独自の組織的な取組み(東北大学版SDGs活動)の原点は、2011年3月に発生した東日本大震災にありました。東北の復興と日本の新生を先導するため、発災の1ヶ月後に全学組織「災害復興新生研究機構」を設置し、その下で8つの重点プロジェクトをスタートさせました。これらは「安心・安全で持続可能な社会の構築」を目指す取組みでした。その一つの災害科学国際研究推進プロジェクトは、2015年3月の国連世界防災会議において制定された国際アジェンダ「仙台防災枠組」に大きく貢献しました。2017年からは、「仙台防災枠組」の実施に向けた議論の場として、防災ダボス会議の仙台版「世界防災フォーラム」を隔年開催しています。さらに、国内外での防災力強化を図るためには防災に関する包括的な国際規格(ISO規格)が必要であることから、現在、産学官の連携体制の下、防災ISO規格の作成に取り組んでいます。
歴史的巨大災害の被災経験と復興プロジェクトを通じて、本学の構成員には「社会と共にある大学」というアイデンティティが醸成され、このことが2015年7月に「社会にインパクトある研究」を開始し、東北大学版SDGs活動が「持続可能で心豊かな社会の創造」を目指すものへと発展する力となりました。
指定国立大学法人に指定された東北大学は、「社会との連携~社会創造・震災復興」を重要課題の一つとして掲げています。「東北大学復興アクション:8大プロジェクト」と「社会にインパクトある研究」を両輪とする東北大学版SDGs活動を新たな社会連携の取組みとして位置づけ、国内外の広範なパートナーの協力の下に積極的に推進し、国連のSDGsの達成にも貢献していきます。